前回から群馬県つながりで、高崎市在住、絲山秋子。
「勤労感謝の日」と「沖で待つ」の2篇。
事故で顔をケガした主人公が
「傷ついたって美人は美人、と威張れるほど
私は美人じゃないし、
もともとどうしようもない顔なんだから
ノープロブレム、と
と言い切れるほどのブスでもない。」
絲山さんのこういう表現大好きだ。
自分を美化するでも卑下するわけでもなく
ものすごく不幸でも幸せでもない、
困難に打ち勝つすごい力があるわけでもなく
落ち度がないのに太っちゃんのように突然死んだり、
我々が暮らしている
理不尽で、とてもごちゃごちゃしている世界を
リアルに描いてくれる。
でもそこにわざとらしくない、
小説ならではの光を
ちゃんと感じることができる。
それは、
最悪な見合いの日に、
居酒屋のマスターが犬のフンを踏んづけた話で
笑う恭子ちゃんであり、
死んでいようが、生きていようが
「同期」という不思議なキズナで結ばれている
太っちゃんと及川、なのだと思った。